中学入試で「新傾向な問題」続々出現?~大学入試改革の影響か

大学入試改革の影響が、中学入試問題にも

「思考力」「判断力」「表現力」を軸に大学入試が改革スタートしますが、その改革を見据えてのことか、

2019年度中学入試問題で、関西の難関中学でも「あれ?これって新傾向?」と思う問題が散見されました。

六甲中学A日程の算数 大問9

次の⑴,⑵の問いに答えなさい。

⑴ 120×8-16×55を計算することで答えが得られるような文章題を1つ考え,その意味が正確に伝わる言葉づかいで問題文を書きなさい。ただし,120×8と8×120のような,かけ算の順序のちがいは考えなくて構いません。

⑵ ⑴で作った問題において,120×8および16×55はそれぞれ何を表しますか。意味が正確に伝わる言葉づかいで書きなさい。

式に合うように、問題を自由に作成させるということですが、数字の設定があるので、それに当てはまるような「具体的な何か」を想起しないといけません。

あと、引き算をどう考えるか。これは意外と難しいかもしれませんね。だいたい、算数の問題に文章で、自分の言葉を使って答えるというのは、おそらくあまり経験がない子供たちなので、意外な名解答や珍解答が生まれているかもしれません。

大阪星光学院中学の算数 大問3

太郎君はお年玉を8000円もらいました。この8000円で,240円のおかしと570円のおもちゃをどちらも1個以上買って,できるだけおつりを少なくなるようにしたいと考えました。

⑴ おつりがないように買うことはできないことを説明しなさい。

⑵ 最も少ないおつりは□円で,それは,おかしを□個,おもちゃを□個買ったときです。

⑴ 「え?説明?」と戸惑った受験生が続出したであろう問題。

分からなかったら「ま、いいか」と先に進めた子はそのあとの大問4や5を難なくこなす(それほど難しい問題ではないので)ことも可能でしょうが、ここで焦ってしまった子は、後に続く問題も失敗したんだろうな、と想像できる「いやな」問題です。

答えは単純で、240や570は3の倍数なので、どのように買っても合計金額は3の倍数ですが、8000は3の倍数ではないので、必ずおつりが出るのです。

⑵ ⑴が理解できれば、⑵は「3の倍数になる金額」で考えられますね。

10円単位で考えると、

8000-10=7990 → 3の倍数ではない

8000-20=7980 → 3の倍数

そこで、7980円が作れないか考えます。

計算を楽にするために、7980÷30=266,240÷30=8,570÷30=19とし、

8×▲+19×■=266となる▲と■を求めると(答えが偶数なので、■には偶数が入ります)、

■=6,▲=19となって、これが答えです。

四天王寺中学の算数 大問6

① 次の□にあてはまるもっとも適当なものを,下の⑴~⑹の中から1つ選びなさい。

3人の子どもA,B,Cがいます。
Aを先頭として,Aの後ろにB,Bの後ろにCが並んでいます。
赤い帽子を1つ,青い帽子を1つ,黒い帽子を3つ準備して,それら5つの帽子を3人に見せた後,1人に1つずつ頭の上にかぶせました。Cには自分の帽子は見えませんが,前にいるAとBの帽子は見えます。Bには自分の帽子も後ろにいるCの帽子も見えませんが,前にいるAの帽子は見えます。Aにはだれの帽子も見えません。3人には,残った2つの帽子の色は知らされていません。
ここで,Cに自分の帽子の色がわかるか聞いたところ,
「わかりません」と答えました。Cの答えを聞いたBは
「自分の帽子の色がわかりました。」と言いました。
このとき,Bがかぶっている帽子の色は(ア)で,Aがかぶっている帽子の色は(イ)です。

⑴ 赤 ⑵ 青 ⑶ 黒 ⑷ 赤か青 ⑸ 赤か黒 ⑹ 青か黒

ずいぶん長い問題文です。

ですが、長いだけでなく、条件をしっかりと読み込んでいかないといけません。

実は小学生が算数を苦手にする理由の一つが、文章の読み取りです。
読むだけで一苦労、さらにそこに書かれた条件をもとに「順序だてて」正解を導かなければならないので、なかなか難儀です。

前置きが長くなりました。

Cが、AとBの帽子を見て、自分のかぶっている帽子の色が分かるのは、AとBの帽子が赤,青の場合です。(この場合、Cは黒色の帽子をかぶっていることになります。)

ですが、「わからない」ので、AとBは「赤と黒」「青と黒」のどちらかということまでは分かります。

Cの答えを聞いた後、BはAの帽子を見て「分かった」ということは、Aは赤か青の帽子だった(したがって、B自身は黒色)ということです。

答えは,(ア)が黒で⑶,(イ)は赤か青で⑷となります。

続いて大問6の②

② 6人の子どもがおたがいの顔が見えるように座っています。
赤い帽子を1つ,青い帽子を1つ,黒い帽子を5つ準備して,それら7つの帽子を6人に見せた後,1人に1つずつ頭の上にかぶせました。
6人には,それぞれ自分の帽子は見えませんが,残り5人の帽子は見えます。6人には残った1つの帽子の色は知らされていません。6人に自分の帽子の色がわかるか聞いたところ,6人が同時に「わかりません。」と答えました。この答えを聞いた6人のうち,「自分の帽子の色がわかりました。」と答える人は何人いますか。

もし、6人のうち2人が赤色、青色の帽子をかぶっていたとしたら、その2人を見た他の4人は、自分の帽子が黒色だと判断できます。

しかし、それができなかったということは、赤か青の帽子をかぶっている人が1人だけだったということです。…㋐

6人全員が「わかりません」と答えるのを聞いた6人は瞬時に㋐を理解しました。

すると、赤か青の帽子をかぶっている人(仮にAさんとします)を見たAさん以外の5人は、自分のかぶっている帽子が黒だとわかります。

Aさんは他の5人が全員黒の帽子をかぶっているのがわかりますが、自分がかぶっているのが赤か青かは判断できませんね。

新傾向問題に対応するのは難しい?

思考力,判断力,表現力、この3つの力を判定するため、大学入試では今までのマークシート方式を改め、記述問題を増やすなどの改革を進めています。

数学でも「解答を選ぶだけの問題」から「設定されたシチュエーションを理解して」解き始めないといけない問題が増える見通しです。

その賛否はともかく、中学受験では、特に算数では、難関校で今まで出題されていた問題はほぼすべて、「思考力」を試す問題が中心でした。

ですから、この部分に関しては「今さら」感が強い。なんですが…

今年の入試問題から垣間見える「新傾向」

今まで触れたことがないような条件設定で、それをもとに思考を進めないといけない問題、既存の問題集や過去問には存在しなかった、その場で1から考えさせる問題、こういった問題が出題できるのだという、その可能性を感じたという点で収穫はありました。

また、「何か」を文章で表現する、今年で言えば先に挙げた六甲の問題や大阪星光の問題のような、記述を迫られる問題、こういった問題も今後出題が増えてくるかもしれません。

こういったことに対して、受験生ができることは何でしょう。

本質の理解に努める

今までであれば、計算ができて、定型問題を覚え、パターンや公式を暗記し、それを利用するという勉強方法でもある程度の成果は出たでしょう。

ですが、そういった勉強で表面をきれいに固めるだけでは、今後出題が見込まれる問題に対応できない可能性があります。

もっと一つのことを深く掘り下げ、わからない部分は徹底的に追求し、本質からしっかりと理解しておく、こんな勉強姿勢が身についていれば、新傾向の問題といえども十分対応できるのではないか、そんな気がしています。

そして、こういった力を発揮するための、問題文に対する「読解力」も磨いていかないといけませんね。

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