算数ができる子になる「あたりまえ」の策 その3 文章題編

考え方の土台ができた子が算数・数学を制するという話~文章題編

算数で勉強していく内容は、大きく分けて

●「数の問題(計算を含む)」
●「図形」
●「文章題」

の3つです。

もちろん、中学受験で扱われる入試問題は、これらが相互にリンクした問題が出題されることが多く、単純な区分けは難しい面はあります。

しかし、そういった入試レベルの問題が扱えるようになるには、そもそもの前提として、絶対に知っておかないといけないことがあります。

それは、「考え方」の土台をしっかり作る重要性です。

これを知らずに低学年を過ごしてしまうと、中学受験のための勉強を始めても、そのために塾に通っても「空回り」してしまうという現実があります。
中学受験だけではありません。
この先、高校受験や大学受験を真剣に考えるのであれば、数学的な思考の大前提になるべき考え方の土台を、小学校低学年、遅くとも小学校4年が終わるまでに、何としても身につけておきたいものです。

「数の問題を考えるための土台」「図形問題をやっていくための土台」「文章問題をこなしていくための土台」、これら3つの土台をしっかり作っておくことが、本当の意味での実力養成につながります。

この先、中学受験で難関校を狙うときも、高校受験や大学受験で数学を確かな得点源にするためにも、そのベースになる土台の育成方法を知り、低学年のうちからこれを実践していくことには大きな意味があります。

今回は,「文章題」の勉強について書いていきましょう。(「数の問題編」はこちら 「図形編」はこちら

3 文章題(文章を読んで答える)

➤算数の問題はすべて文章で問われている

算数の問題というのは、単純な計算の問題を除けば、当たり前ですが、すべて文章による問いかけになっています。

そして、そこには様々な条件が設定されています。

そこで子供は、与えられた問題文から条件を読み取りその条件を何らかの形で整理して条件すべてに合う答えを求めないといけません

つるかめ算や過不足算といった「特殊文章題」だけでなく、足す,引く,かける,割る,といった、大人からすれば明白な、計算を1回すれば答えが求められるような問題でも、子供からすると立派な条件になり、乗り越えないといけない壁になるのです。

こういった条件に「気づく」ことで初めて文章問題に切り込むことができるのです。

➤条件に気付き視覚化して「考える」

しかし、例えば同じ引き算を使う条件設定でも、それに対する設問は幾通りもあります。

・太郎と花子の持っている個数の違いを求めなさい。(2つの「別のもの」をくらべる)
・太郎が〇個食べると残りは何個ですか。〇個残ったとき、食べたのは何個ですか。(1つのものの増減をくらべる)

個数など、目で見てくらべやすいものをくらべる場合だけではありません。

・昨日の最高気温は19度で、今日は23度です。何度上がりましたか。(しかも「増えている」のに引き算を使う)

大人の目からは「どれも引き算じゃない!!」と分かる、わかって当然なのですが、子供、特に小学校の低学年だとなかなかそう簡単にはいきません。

そこで大切になってくるのが問題の設定の視覚化です。(つまり、文章を読んだときにイメージが求められているのです。)

実際にりんごの絵を、個数分描いてみる、温度計を2つならべて描いて考えるなど、イメージしやすいものを入口にして、「引き算をする場面」を実際に想像し、紙に書き起こし、それを見ながら考える、そういった再現力が、この先複雑な問題を解いていくうえで大きな助けになっていきます。

ここでは「引き算」を例に考えましたが、かけ算や割り算でも、そういった再現力、イメージする力は同じように、またはそれ以上に要求されます。

大人がひとことで「これ引き算でしょ」「これ割り算ね」などと言ってしまえば子供のイメージする力はそこで終了。その先へは決して進まないでしょう。

➤立式はしなくてよい

また、大人は「立式する」ことが重要と考えてしまいがちです。
数学などを勉強したら、式が書かれていないと答えがあっていても正解扱いしてくれないのは、中学や高校で数学をやってきた大人にとっては当然のことです。

でも、算数では立式は不要です。

たとえば、「私が朝家を出たときにみかんは10個ありました。その日学校から帰るとみかんは7個になっていました。何個減りましたか。」

10-7=3で、3個減った、でもちろんいいのですが、これを次のように考える子がいたらいかがでしょう。
7+1=8個、8+1=9個、9+1=10個
最初の1個はお母さんが食べて、次の1個はおばあちゃんが食べて、あと1個はまたお母さんが食べたんだ。だから1+1+1=3個

確かに稚拙な考え方です。ですが何もヒントをもらわずこれを考えたのなら、その答案には💮(花丸)をあげたい。
その子は「状況を正確に把握」し、「場面をしっかりイメージして」問題に対しているからです。
式が作れたから問題が解けるのではなく、状況把握とイメージができたからこそ、正解が導けた。それが今後の算数力の伸びに必ずつながっていきます。

条件設定 → 状況把握 → 場面を生き生きとイメージする
文章問題は、この流れを考えて取り組めばいいのではないでしょうか。

➤考える力を育てる

算数において、 特に文章で書かれた問題を解く際には、親が子供に「問題をよく読んで考えてみなさい」などと、ある意味気軽に声をかけてしまいます。
ですが、子供からしたら、この「考える」という状況は、何をしたらいいかわからない状況です。
何をもってしたら「考える」ということなのか、いまいちぴんときません。
あげく、えんぴつを持ったまま手が止まり、思考も止まり、「考える時間」=「何もせずにぼーっとする時間」となってしまうのです。

そこで、算数の文章問題(だけではないですが)を解く際に要求される「考える」ということを、次のように再定義してみましょう。

“考える”とは「与えられた条件に合う事柄を見つけ、それがほかの条件を満たしているかどうか一つ一つ精査して、すべての条件を満たす事柄を見つけ出す作業」だとするのです。

そうすると、「考える」=「作業をする」に置き換わります。
この場合、必要な作業は次の通りです。
・問題に書かれていることから条件を探し出す(列挙する)。
・条件に合う候補を探す。
・その候補がすべての条件を満たしているか確認する。

単純に問題に書かれた1つの条件に合った項目を書き出すとか、ある項目がそこに書かれた条件に合致するかどうか調べてみるとか、条件に合うものと合わないものを分類するとか、条件に合わないものを省いていくとかいった作業です。こういったことを意識的に行うことで、まずは「作業」が徐々にできるようになり、それが“考える力”の育成につながっていくのです。

➤文章題は「あてはめて解く」

そして、以上のように考えると、小学校の、特に低学年では、文章題は「条件に当てはまる数値を求める」問題だと理解できることになります。
塾に通っていたら、線分図の描き方を習うなど、その問題を解くのに「最適・最短」な方法を習います。
しかし、低学年の間は特に、そういったやり方に固執する必要はまったくありません。というか、むしろ邪魔です。
自由に発想し、あてはめ、条件に合う数値にたどり着く、そういう道筋をたどった方が、実は後々の算数力は鍛えられます。
うまい解き方を習ってそれを使って問題を解く、というのは、時間に追われた最近の小学生(だけでなく親にとっても)には魅力的に映ります。ですが、それらは文章題の本質ではありません。
そもそも文章題は「条件にあてはまる数値を探す」ものであり、いわば「数あてクイズ」です。
文章題を解くための本当の第一歩は、まずあてはまる数を探す、つまり「あてはめていく」ことなのです。
実際に数値をあてはめて、それが問題の条件に合うかどうかを確認することは、条件を理解する力や、数値同士の関係を把握する力にもつながります。それらの力こそ、文章題を解いていく力の基盤となるものです。

こういったことが自然にできるようになることが、まずは非常に大切です。
解き方のテクニックを身につけた小学生は、その先にその殻をなかなか破れず、目先を変えられた問題に四苦八苦します。
ですが、自分の頭で条件に合うものを考える練習を重ねた子には、テクニックから入った子にはない、ある意味「力強さ」が備わります。
それこそが、中学受験の算数の難問や、さらにその先にある数学の学習に大いに役立ってくるのです。

新教材の予告です

現在、「親と子の中学受験」では、次のようなプリントを作成しています。
算数が苦手な方、数の間隔をもっと磨きたい方に役立つ内容になると思います。

★ 無限繰上り練習プリント(2けた+1けた,2けた+2けた)
★ 無限繰り下がり練習プリント(2けた-1けた,2けた-2けた)
☆ ババゲー (内容はまだ秘密ですが,数の感覚を研ぎ澄ますための教材です)
☆ バラゲー,連続バラゲー (どちらも内容はまだ秘密ですが,これらも数の感覚を伸ばします)
☆ クミラク計算練習 (数のセンスを向上させる教材ですが,内容はまだ秘密です)
★ オリゲー (図形感覚向上に役立つ教材です)
★ キキゲー (これも図形感覚向上に役立つ教材です)
これ以外に、文章題を図で考える教材も鋭意作成しています。

すべて、小学校の低学年~4年生ぐらいまでが対象で、算数力の向上を目指すための教材になる予定です。

「数の問題編」はこちら

「図形編」はこちら

 

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