算数ができる子になる「あたりまえ」の策 その1 数の問題編

考え方の土台ができた子が算数・数学を制するという話~数の問題編

算数で勉強していく内容は、大きく分けて

●「数の問題(計算を含む)」
●「図形」
●「文章題」

の3つです。

もちろん、中学受験で扱われる入試問題は、これらが相互にリンクした問題が出題されることが多く、単純な区分けは難しい面はあります。

しかし、そういった入試レベルの問題が扱えるようになるには、そもそもの前提として、絶対に知っておかないといけないことがあります。

それは、「考え方」の土台をしっかり作る重要性です。

これを知らずに低学年を過ごしてしまうと、中学受験のための勉強を始めても、そのために塾に通っても「空回り」してしまうという現実があります。
中学受験だけではありません。
この先、高校受験や大学受験を真剣に考えるのであれば、数学的な思考の大前提になるべき考え方の土台を、小学校低学年、遅くとも小学校4年が終わるまでに、何としても身につけておきたいものです。

「数の問題を考えるための土台」「図形問題をやっていくための土台」「文章問題をこなしていくための土台」、これら3つの土台をしっかり作っておくことが、本当の意味での実力養成につながります。

この先、中学受験で難関校を狙うときも、高校受験や大学受験で数学を確かな得点源にするためにも、そのベースになる土台の育成方法を知り、低学年のうちからこれを実践していくことには大きな意味があります。

今回は,「数の問題」の勉強について書いていきましょう。(「文章題編」はこちら 「図形編」はこちら

1 数の問題

「数の問題」で扱う内容は、「整数・小数・分数計算」,「規則性」,「数の性質」,「場合の数」などです。

足し算や引き算は「豊かな数の世界」への入り口

一口に「足し算」「引き算」 と言っても、それは豊かな“数の世界” への入り口になっています。決してあなどってはいけません。

繰上がりや繰り下がりなどを含む“計算練習”は、もちろんこれをストレスなく答えが出せるようになるまで、繰り返し練習しないといけません。

ですが、ここで終わりにしてはいけません。
これは、大きな数の足し算や引き算までスラスラ暗算で求められないといけないということではありません。もちろん、できないよりできた方がいいのはいいのですが、ややこしい計算はひっ算を書いて求めても何ら問題はありません。

ここで言う「終わりにしてはいけない」というのは、単純なかけ算や引き算すら、その先にある規則性や数の性質への架け橋にできるからであり、また、様々な工夫を考えていくことで、柔軟な発想力を身につけていくことが可能であるということにつながっているからです。

例①

2に2を次々足していったら、九九の2の段が出来上がります。さらに足していくと出来上がる数の列は2の倍数が並ぶ列にもなります。(偶数列)

例②

10から1を次々ひいていくと、いずれは0になって、小学校の範囲ではそれで終了。ですが、温度計の世界では(棒温度計を想像してください)まだ先があります。0から1を引けば氷点下1度(-1度)、そして-2,-3,…と、次々1を引くことに終わりがないことにも気づくかもしれません。数の世界は広がったのです。

このように、さまざまな角度から数と触れ合う機会をたくさん持つことで、 数の世界への理解は深まるでしょう。そこで得られる 「豊かなイメージ」、それは “算数のセンス” を構成する1つの重要な要素だと言えます。

1けたや2けたの小さな数で「足し算」「引き算」を繰り返すだけでも、そういった計算が持つ多彩な世界に入っていくことが可能になるのです。いや、むしろ、単純な分かりやすい数でこういったことをやっていくことで、イメージの世界は膨らみ、豊かな数の世界を実感していくことが可能になっていくのです。そして、こういったことはできれば小学校の低学年のうちに味わわせてあげられたらと思います。

数を分解・合成する力

計算だけが算数ではありませんが、基礎的な計算がスムーズにできれば、その後の算数の学習が楽になる、というのは事実です。

3つ以上の数を足したり、同じ数を足していったり、足し算の形に分解したり、というような計算が自由にできるように練習をしていくことは、算数の土台を固めていくうえで非常に大切です。

例③

94+47を計算するとき,ふつうのひっ算の手順では、まず一の位の4+7=11をやって,繰り上がった1を次の9+4に入れて9+4+1=14とし、141という答えを得ます。
もちろんこれで問題ないのですが、数の分解を使って考えると
94+6=100,47-6=41となるので,100+41=141となります。
また、90+4+40+7とバラバラにし、90+40=130,4+7=11なので、130+11=141とすることもできます。

どの解き方がダメで,どれが正しいということではありません。その場面、状況に応じて、計算にさえ頭をフルに回転させる、これが大切です。

足し算や引き算をもっと大きな数の世界につなげる

しかし、この話はこれにとどまらないのです。

まず、先の例①の考え方、つまり「同じ数を次々足していく」というのは、倍数の考えに通じます。また,等差数列の考え方にも通じます。

次に、場合の数の問題で、10個のみかんをA,B,Cの3人で分ける分け方が何通りあるか尋ねる問題があります。
10を3つの数の和に分解するというものですが、単純に10を3つの整数の和に分解するということですから、数を自由に使いこなすことに慣れていれば、さほど苦労することなく正解に持っていけます。
1+1+8,1+2+7,1+3+6,1+4+5,…
自分で書き出しのルールを決めて、順序良く調べていくと必ず答えが分かります。
このとき,1+〇+△を考える際、〇が1増えたら△は1減る。当たり前のことですが、自分でそのルールを見つけ出すことは大切です。

かけ算や割り算がさらに数の世界を広げる

かけ算や割り算も、この「数の合成・分解」に寄与します。

ひとつ簡単な例を見ておきましょう。

例④

36×75を計算します。もちろんひっ算で正解しても問題ないのですが、少し考えたら次のような解き方があることに気づくでしょう(というか、気づいてほしい)。
36=9×4,75=25×3
36×75=9×4×25×3=9×3×(25×4)=27×100=2700
頭の中で数を分解することに慣れてくれば、こういった計算もすぐに答えが出せます。

単純なかけ算や割り算もストレスなくスムーズにできるようになっておくことは、中・高学年での算数に役立つだけでなく、さらにその先、数学の勉強を進めていくうえでも非常に重要な要素になっていくのです。

単純計算の練習は「苦行」ですが怠ってはいけません!

子どもはみんな、単純計算の練習は嫌がるものです。
ですが、足し算の繰上り、引き算の繰り下がり、九九など、考えることなくスラスラできるようになっておかないと、ここで紹介したような考え方に行きつくのは難しいですし、何より「数の世界」は広がっていきません。
ですから、計算の基礎体力だけは低学年のうちにしっかりつけておいてほしいと思います。

計算の基礎体力の例

・1けた+1けた(繰り上がり)
・2けた+1けた(繰り上がり)
・2けた-1けた(繰り下がり)

これが完全にマスターできたら
・2けた+2けた(繰り上がり)
・2けた-2けた(繰り下がり)

たし算や引き算ではこれ以外に
・たして50になる組み合わせ
・たして100になる組み合わせ

かけ算では九九はできて当たり前です。
ストレスなくすらすら言えるまで何度でも繰り返して、確実に覚えきりましょう。

新教材の予告です

現在、「親と子の中学受験」では、次のようなプリントを作成しています。
算数が苦手な方、数の間隔をもっと磨きたい方に役立つ内容になると思います。

★ 無限繰上り練習プリント(2けた+1けた,2けた+2けた)
★ 無限繰り下がり練習プリント(2けた-1けた,2けた-2けた)
☆ ババゲー (内容はまだ秘密ですが,数の感覚を研ぎ澄ますための教材です)
☆ バラゲー,連続バラゲー (どちらも内容はまだ秘密ですが,これらも数の感覚を伸ばします)
☆ クミラク計算練習 (数のセンスを向上させる教材ですが,内容はまだ秘密です)
★ オリゲー (図形感覚向上に役立つ教材です)
★ キキゲー (これも図形感覚向上に役立つ教材です)
これ以外に、文章題を図で考える教材も鋭意作成しています。

すべて、小学校の低学年~4年生ぐらいまでが対象で、算数力の向上を目指すための教材になる予定です。

続き(図形の問題編)はこちら

続き(文章題の問題編)はこちら

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