
先日、「大阪桐蔭が名門校になれない理由」を書いたのですが、その直後、大阪桐蔭の不正経理が発覚しました。
大変残念な事件です。
教材費やテスト代の水増し請求と、余剰金の簿外プール。
その金額は5億円に上るそうです。
詳細については、新聞記事やニュースサイトに譲りますのでこれ以上は触れません。
(直接の被害者は、余分にお金を取られた本校の在学生、および卒業生ということになりますね。)
で、本稿では、この事件の余波が中学受験に及ぼす影響はどうなんだろうということを考えたいと思います。
1 受験者数は減るだろうか。
今まででも、大阪桐蔭を第一志望にしてきた生徒は、数は多くありません。
大部分の生徒、受験生にとっては、大阪桐蔭は滑り止めの受験です。
ですので、あえてこの学校を選ばないといけない理由そのものが希薄なのです。
ということは、今回の不祥事で受験者数が減少する可能性は大いにありますね。
2 プレテスト受験者は減るだろうか。
1と同様の理由で、あえてお金を払ってまでプレテストを受ける(特に今回の不祥事はお金に絡んでいますから)ことを良しとしない保護者が増えるのではないでしょうか。
今までなら、プレテスト受験者は本番の受験で多少有利に扱ってくれるというのがありましたが、それもいざというときの押さえのため。
ならば、行かせもしないのに受験させるという人は減る可能性が高いですよね。
3 入試の難易度はどう変わるか。
以上から、入試の難易度はかなり下がると考えていいのではないでしょうか。
ただ、大阪桐蔭に行って、上位50傑にはいっていれば京大も十分可能なわけですから、それを狙ってあえて大阪桐蔭進学を目指す人も一定数いるでしょう。
実際、他の中学で、塾や予備校との併用でダブルスクールを考えるのなら、桐蔭で一括でまとめて面倒を見てもらえるというのは、うれしい限り、という保護者は存在します。
大阪桐蔭「らしさ」は残せるのか?
さて、ここで問題です。
大阪桐蔭で、熱心に生徒指導に当たってきた先生方の手当てについてです。
かなり突っ込んだ話で恐縮です。
熱心に指導して、成果(大学合格)を上げたら、先生方にその分十分にペイされてきたのでしょうか。
ペイされてきたとして、果たしてその財源は?
これは、受験指導に熱心な学校が必ず直面する問題です。
私立の学校では、やはり教員はペイで動く一面が結構あります。
正規採用になって、何年か勤続し、一定の成果を上げてくると、当然その働きに見合った給料が欲しくなる。教師も人間ですし、生活もありますから、それは当然の要求です。
ですが、なかなか思うようにペイされない。
そこに、他の私学から誘いが来る。
条件が良ければ、職場を変えるのはごく普通の流れです。
学校側も事態を静観するわけでは決してありません。陰でいろいろ手は打ちますが、なかなか留まってくれない場合も多いみたいです。
一部の学校では、こういった事態を避けるため、たとえば教材を生徒に販売するときのバックマージンを、その担当の教員が(暗黙の了解で)受け取るということも行われているようです。
必死で生徒の指導にあたり、勤務時間もサービス残業の連続する教員からすれば、ありがたい話ですし、学校側もそれで熱心な教員が残留してくれるならこんなありがたい話はありません。
難関校と言われる学校の中には、一部非常勤の先生で賄う部分ももちろんあります。
いい先生をフルで雇うとなると、人件費が膨大に膨れ上がりますから、これはやむを得ない措置でしょう。
ですが、その割合が、 例えば半数以上になってくるとこれは問題です。(3分の1でもどうかと思いますが。)
今回問題視されている学校では、こういった面でも絶えず黒いうわさは流れてきていました。
非常勤で、しかも教員免許を持っていない教員の数がかなりいる、という噂もあります。
今回のことをきっかけに、いい方向、健全な学校運営に舵を大きく切り直して欲しいと思います。
で、桐蔭らしさ。今回の事件で、学校を後にする教員も数多く出てくる可能性はあります。
今まで生徒指導に熱心だった先生方が大挙していなくなったとき、果たして今までのような指導体制を継続できるのか、それとも別の方向で生徒指導を行うことを考えるのか(例えば、補習はすべて有料とし、優秀な非常勤の先生をそこで雇って受験対策を行うなど)、今後どういう風に変わっていくのかはしっかり見極めたいところです。
今いる生徒・保護者に対する責任
最後に、現在の在校生に対する責任です。
こういった不祥事、それに伴う大きな動きが今後出てくるでしょうが、何があっても一旦預かった生徒を困惑させるような方法は取ってはいけません。
「うちの学校は、預かった生徒をとことん面倒を見て希望の大学を目指します」と約束して入学してもらっているのですから、その責任はきっちりと取ってください。
今後の動き、在校生の指導、そういったものを見極めたうえで、今後塾業界が大阪桐蔭受験を保護者・生徒に進めるかどうかが決まる。本当の正念場はここからだと思います。