親が子供に算数を教えるのは「あり」か「なし」か

親は子供に算数を教えるべきか

「教えないでください」

こういうご相談が、4年生のお子様をお持ちの方からありました。

親が教える場合だけでなく、家庭教師や個別指導で「教えてもらう」場合も含めて考えてみましょう。

教えていいのかダメなのか、これは子供の学年、成績、子供の状況などを総合的に考慮して判断しないといけないことです。一律に4年だからオーケーとかダメとかの判断はできません。ここから先の内容は、あくまで一般論としてお読みいただき、ご自分のお子様にあてはまる部分を上手に利用してください。

4年生以上には「教えないでさせる」が基本ですが

なぜ「教えたらダメ」なのか

受験は「孤独な闘い」です。少なくとも入試会場で問題に対峙しているとき、頼れるのは自分だけ。ですから、その時になって力が発揮できない勉強法ははっきり言って無駄。

ふだんから、自分で問題をしっかり読み取り、問題を整理し、考え、自分で自分にヒントを与える図や表をかき、式をつくり解答を出していくという勉強は不可欠です。

そして、ここが重要ですが、こういったスタンスでちゃんと勉強を進められる子は成績の伸びも十分に期待できます

塾の先生のおっしゃる「教えないでください」には、こんな意図が含まれています。

教えないといけない場合もある

ですが、そんなに真っすぐに伸びていく子供は稀有な存在です。

➤塾で習ってきたことを家でもう一度やろうとしてもできない

➤宿題がまったく進まず時間ばかり使っている

ということが普通にあるものです。

こういう状況で、「教えない」ですべて自分でやりなさい、というのははっきり言って時間とエネルギーをドブに捨てているようなものです。

進まないからと言って解説を見て、それを丸写ししたり解説に書かれていることを丸暗記したりしても実力がつくものではありません。

親や個別指導の先生のアシストが重要で、必要不可欠です。

一緒に考えてやる

習ったことが理解できているかどうかは、塾でやった例題や類題をさせれば分かります。
目の前でさせてみて理解不十分だと感じたら、もう一度最初から一緒にやってあげてください。

それがクリアできたら、次に該当範囲の基本問題(宿題に出ていることが多いです)を、1ページ15分ぐらいを目安にさせてみましょう。スラスラできたら問題ありませんが、途中で何か所かつまずく箇所があるのが普通です。できなかったところは一緒に考える。
問題をもう一度しっかり読んでみることで対処できることもあります。
基本事項をどういう風に使えばいいかで行き詰っていることもあるでしょう。

基本問題だからこそ、徹底的に理解に向けてやっておくことが重要です。

これがしっかりできて初めて、次のステップで「自分で考える」ことができるようになります。

次の応用問題では30分程度を目安にしっかりと考えさせましょう。

競走する

基本事項が身についた、使えるようになったと感じたら、次のステップで、親と子が競走して問題を解くのもいいかもしれません。子供の真剣さが変わります。

「どうせ負けるから」という態度で嫌々取り組むことがないように、親が連戦連勝することがないようにしてあげてくださいね。

このやり方には素敵なおまけがついてきます。

おまけその1

応用問題ともなれば、やや難しい問題も入ってきますが、競走しているという意識から、真剣に考えるモードが引き出されます。算数で大切なのはこの「真剣に考える」という姿勢です。
自分一人でやるだけだと、なかなかこのモードには入れません。

おまけその2

親が解けず(または解けなかったふりでもいいですが)子供が解けた問題があったとき、子供に解説してもらいましょう。人に教えることによって、より理解が深まります

おまけその3

解説を理解する方法が学べます。
親子ともに解けなかったときは、一緒に解説をチェックします。
このとき、書かれていることの上辺だけをなぞるのでは無く、どうしてこの式になったか、どう考えたらいいのかという深いツッコミもしてください。
解説の活用ができるようになれば、この先の勉強でそれは必ず生かされます

低学年のうちは計算方法、文章題の式の作り方を教える。

ここで、低学年、だいたい小3ぐらいまでの取り組み方も見ておきましょう。

計算力

計算ができないことには、多くの算数の問題は答えが出せません。ここで言う計算とは、たし算・引き算・かけ算・割り算といった四則計算。
少なくとも整数の範囲で、確実に正確にある程度のスピードで答えに行きつく必要があります。
ここが十分できていなければ、この先の様々な問題で正しい答えが出せません。

しかも、多くの集団で授業を行う塾ではここまで面倒を見切れないことが多い。
ですから、親の責務として少なくとも確実な計算力を子供につけさせてください

与えられた文章を式で表す

四則を使って問題を式で表す練習も、簡単なものは自分でさっさと式にできないといけません。

ある文章で表された内容が「たし算」「引き算」「かけ算」「わり算」のどの形で表されるのかの判断ができない、またはあやふやであると感じたら、きちんと理解できるよう親がサポートすべきです。

規則の見つけ方などもサジェストする

規則性を利用して答えを見つけ出す、これもこの先非常に重要なスキルになります。
同じ組み合わせが繰り返し出てくる、とか、同じ数が増えていく、とか。同じ曜日は7日ごとにやってくるなどもそうですが、子供がその規則性に気づけない場合も、ある程度親がヒントを与えるのはいいことです。

かけ算の九九も、これは倍数ですが、同じ数が増えていきますよね。単に暗記するのではなく、こんな規則があるのか、という発見がその先につながっていきます。

教えてみる→考えさせる・させてみる→できたら褒める

考えさせる・させてみる

次に大切なのは、「教えたことをさせてみる」、「ヒントを与えたら考えさせる」、ということです。
教えっぱなし、ヒントを与えておしまい、にしないでください。

教えたことがちゃんと使えているか、与えたヒントからどう考えたのか、これを細かくチェックすることが重要で、変な方向に進みそうなら、早めに修正しておきます。

できたら褒める(ちょっと大げさに)

そして、それと同じく大切なことは、「できたら褒める」こと。

よくがんばったね、とか、すごいじゃん、とかの言葉がけです。褒められることで子供は「もっとがんばってみよう」とか「もっとできる」という意識を持ちます。この威力は大きいです。

図形問題でも手を貸してやる

図形を一緒に描いてやる

三角形や四角形、円、などは簡単に図を描かせることが大切

できれば定規やコンパスを使わないで、できるだけ丁寧に正確に書く練習は低学年のうちにやっておきたいところです。

まっすぐな線を引く、直角三角形を描くといったことも最初は親が一緒に取り組んであげましょう。自分で図形が描けるようになれば、この先図形問題に自信を持って取り組めるようになります。

立体図形の見取り図を練習する

できれば小3が終了するまでに、簡単な立体図形の見取り図も描けるようになっておくのが望ましいですが、これも子供だけだと結構難しいものです。親が一緒にやってあげましょう。
立方体・直方体・円柱・四角すいぐらいがそこそこ上手に描ければ十分です。

 

算数好きにするのも算数嫌いにするのも親次第

算数は楽しいものだ、計算が速く正確にできたらうれしい、解けなかった問題が解けたら気持ちいい。

こういう気持ちで進んでいくことができたら、新しい単元に入っても「自分で」できるようになっていきます。

逆に、「解けなかったら叱る」、「計算が遅かったらきつく当たる」という接し方だと、算数は苦痛だという意識が定着し、今は仕方なくさせられていてまだ成績は維持しているけどこの先の伸びが期待できません。

いずれは面倒見切れなくなるのです。子供が自分で突き進んでいく力を手に入れる、そこにこそ親は力を注いであげないといけません。中学受験は、親が子供の手を引いて進んでいけるラストチャンスです。でも、最後まで親主導で行くのではなく、最後は自力で突破できるように持って行ってあげることこそ、中学受験をさせる親の務めだと思います。

数学につながる思考、やり方を育てる

塾や予備校にも通わずほぼ独学で、中堅の私立高校から東大に合格した人の体験が紹介された記事があります。(金なし・無名校でも…なんで私が東大に? 合格勉強法を大公開~PRESIDENT Online

この中で、ある東大生は次のように話しています。

「効率を上げるには無駄を省くにかぎります。わからない問題を前に悩んでいる時間もその1つ。数学なら3分間考えて答えが出せなければ、すぐに解答と解説を見て頭に入れました。入試問題には絶対に答えがあり、そこにいかに早く正確にたどりつけるかを計るのが受験の本質だからです」

別の東大生も次のように話しています。

「量もそうですが、それ以上に重視したのが勉強の質です。たとえば数学は、すぐに解法が浮かばないときは先に解答を見て、なぜこの定理が使われているか、解説の行間を読むことに時間をかけました。そこさえ理解できれば後の計算は省いていいし、解法は他の問題にも転用できるので、数をこなすより短期間で力が伸びるのです」

算数の場合も基本的には同じ勉強で十分通用する、とボクは思っています。

ただ、数学との違いは、まだ論理的に考える力、抽象化が十分できない小学生なので、ある程度問題をかみ砕き、具体化し、イメージできるようにしながら進めてあげないと、完全理解が難しい点です。

この部分のサポートを周囲の大人がしっかりやってあげることで、子供の力は驚くほど伸びていきます

大量の問題をスパルタ的にさせる進学塾も多く、それなりの意義はあると思いますが、まずは理解して、その中身を自分のものにしていく勉強方法というのは、単に大量に問題を解かされる勉強よりも数段将来伸びていく力が備わっていくものだと、ボクは考えています。

これが数学につながっていきます。

親のための算数講座

子供に算数を教えるって、無理無理~なんて言ってたら、子供が塾の算数についていけなくなるかもしれませんよ。お母さんやお父さんもある程度算数のことを分かっていないと、子供に的確なアドバイスはできないし、子供の成績も低迷してしまうかも。何もかも塾任せにしないことが大切です。

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https://xn--o9jm959tz7ehnk3d5765aop1a.net/post-1298/

算数担当はお父さん、国語担当はお母さんみたいな役割分担をして子供の勉強をフォローしているご家庭も多いと思います。このとき算数担当の親御さんが「数学」を教えてしまうことも多いもの。簡単な方程式ならともかく(これとて、xが2個以上出てくると難しいのですが)、複雑な方程式を「立式」するのは、子供にとっては至難の業。きちんと「算数」で教えられるように、最低限のことは分かっていてほしいと思います。
➤中学受験までに「子供がやっておかないといけない算数」のすべてを知っておきたい、というのであれば、次のテキストが役立ちます。

テキスト「算数教室」(親と子の中学受験マニュアル編著)

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