ノーベル医学・生理学賞選出の北里大の大村智氏は苦学の人だった

日本人23人目のノーベル賞受賞者

2015年、ノーベル賞の医学・生理学賞に北里大学特別栄誉教授の大村智氏が選出されました。

nobelprize01

微生物が作り出す有用な化合物を多数発見、多くの人に役立つ医薬品の開発につなげたことが授賞理由です。

中でも、アフリカなどの風土病「オンコセルカ症」という、失明の原因となる恐ろしい病気に対する治療薬の開発につながる抗生物質「エバーメクチン」を発見したことは、その多くの功績の中でもひときわ輝かしいものです。

「エバーメクチン」をもとに開発された寄生虫駆除剤「イベルメクチン」はアフリカや中南米で何十億の人々に無償で提供され、多くの人々を失明の危機から救ったのです。何と素晴らしいことでしょう。

日本人としては湯川秀樹博士の物理学賞に始まって23人目、医学・生理学賞では利根川進氏、山中伸弥氏に次いで3人目の快挙です。おめでとうございます。同じ日本人として誇らしく思います。

既に多くのメディアで報道されているように、大村氏の経歴はかなり特異です。

昭和10年、山梨県神山村(現韮崎市)の農家の長男として生まれ、家業である農業の手伝いをしながら、山梨大学に進学、卒業後、東京都立墨田工業高校夜間部で教鞭をとっていましたが、昼間働く生徒のがんばりを目の当たりにし、一念発起、昼の空き時間を利用して東京教育大の研究生を経て、東京理科大の大学院に入学。その後、北里研究所に入り研究者生活が始まったのです。

このとき、すでに30歳。研究者としてのスタートはかなり遅いものでした。

しかし、幼いころから祖母にさんざん聞かされていた「人の役に立て」という言葉で自分を奮い立たせ頑張ったそうです。

また、山梨大学生だった時には、スキーのクロスカントリーで、過酷なトレーニングに耐えて2度も国体に出場しています。

偏差値秀才だけでは世界に対抗できない

このサイトで、管理人は、難関私立中学に入学し、末は東大、京大、医学部医学科を目指そう!と声高に訴えてきました。

ですが、正直、最近迷いが生じていました。

こんな記事が出ていました。(他にもいろいろなところで取り上げられていました。)

世界大学ランキング 東大 アジア首位から転落(NHK NEWS WEB 2015年10月6日)

一部を抜粋します。

1位は5年続けてカリフォルニア工科大学で、8位までをアメリカとイギリスの大学が占めました。
アジアで見ますと、東京大学が去年の23位から43位と大きく順位を下げて、5年ぶりにアジアの首位から転落し、シンガポール国立大学と中国の北京大学に抜かれました。また、去年59位だった京都大学が、ことしは88位となったほか、去年、上位200校に入っていた東京工業大学や大阪大学、それに東北大学は、圏外に姿を消し、日本の大学にとっては厳しい結果となりました。

これは忌々しき事態だと思うのです。日本を代表する頭脳の多くが進学するトップ2大学の世界的な評価が、低下してきている。

WEDGE Infinity2015年10月05日の記事では「東大京大の世界ランク 北京大に抜かれ文科省に激震 」と題して、

日本を代表する東大の世界ランキングが43位というのは、さみしい限りだ。早速この結果について東大にコメントを求めると、「コメントはしません」(広報)と、事実上、取材拒否だった。京大も同じようにコメントしてもらえなかった。

一方の文科省の森田正信高等教育企画課長は「『THE』によると評価指標のデータの取り方が変更になった結果、論文引用数のスコアが低下したようだ。この変更が日本の大学のランキング低下につながったのかどうかを分析したい。

という記事を掲載しています。

これは、これまでの日本のエリート要請に至るまでの道のりが、何かしら道を踏み間違えているということなのではないか、と管理人は考えます。

中学受験から始まって、大学受験まで、今の日本の教育は「偏差値秀才」育成のシステムが出来上がっています。

そして、そのシステムの中で純粋に培養された子供たちが、東大や京大などのトップ校に進学していく。

もちろん、そうでない子らも多く含まれているでしょう。しかし、管理人の感触としては、一昔前と比べて、偏差値秀才の割合が増えたような気がします。(あくまで感触ですので、念のため。)

そしてそういった子らの中には、大学に進学するまでほとんど挫折らしい挫折を経験していない子も多く含まれているのではないか。

今回ノーベル医学・生理学賞を受賞することが決まった大村智氏はその経歴から分かるように「苦学の人」です。

京大の山中伸弥教授も、大きな挫折を経験しています。

しかし、だからこそこういった偉人たちは、その経験をばねにして、私たち常人が到達できないところに行けたのではないでしょうか。

そして、日本の大学の評価が低下してきているのは、こういった強い心や何かを成し遂げようという志がある子らを、偏差値という名のもとに拒否してきたところもあるのではないか、こう思うのです。

大学入試のシステムが変わるが、本質まで変えられるのか?

平成33年といいますから、今から6年先ですが、大学入試センター試験が廃止され、到達度テストという名の試験が始まることになっています。

この改革で何が変わって何が変わらないか、これまでの偏差値秀才量産型の日本の教育システムに変革のくさびを打ち込むことができるのか、頑張った子が報われる試験にもなってほしいし、真に才能のある子がその才能を生かせるシステムにもなってほしいし、志のある子のその志を生かせる入試になるのか、まだまだ未知数が多過ぎてわからないことだらけです。

ですが、日本が世界に伍していくための優秀な人材が輩出できるシステムを作っていって欲しいと思います。

トピックに戻る

記事が気に入ったら「いいね」してください!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください