成績を伸ばす子、伸ばせない子
子どもたちの算数の勉強を見ていて、「この子はこれからもっと伸びそうだ」とか「この先伸び悩むかも」と思わされることはよくあります。
まじめにこつこつやっていても、その先伸びる子と伸びない子はいるし、適当にやっていても成績を伸ばして行く子とそうでない子がいます。
いったい何が違うのでしょうか。頑張っているのに成績を伸ばし切れていない子には何が不足しているのでしょうか。そして、算数における「守破離」とはいったい何なのか。お子様に当てはめて読んでみてください。
中学受験の算数は「守・破・離」が重要
伝統芸能でよく使われる「守破離」ですが、中学入試の算数で高得点をしていくときの勉強の進め方に通じることが多くあります。
「守」~師匠から教わった型を徹底的に「守る」こと
算数であれば「解き方の基本事項」や「解法のパターン」といったことを、徹底的に身につけることがこれに当たるでしょう。
計算のやり方や工夫のしかたを徹底的に身につける、とか
基本的な問題の考え方を基礎からしっかり使えるようにする、とか
高度な解法のテクニックを徹底的に身につける、とか
が、この段階です。
塾に通い、塾で与えられたテキストをコツコツやっていく、いわば「土台を徹底的に仕上げていく」というのがこれに当たります。
これがしっかりできるようになるだけでも、中堅校の受験であれば合格点が狙えるでしょう。
ですが、難関校になってくると、これだけでは不十分です。
次の段階「破」が必要になってきます。
「破」~型をベースに、自分に合ったより良いと思われる型を模索し試して既存の型を「破る」こと
教えに従って修業・鍛錬を積みその型を身につけた者は、それをさらに推し進めて、より自分に合った型を模索し既存の型を「破る」ことができるようになります。
「塾のテストで高得点し、上位クラスに食い込み、志望校である難関校の合格に近づいていく。」という段階がこれに当たります。
教えられた型に忠実であるだけでは、得点力に限界が必ずやってきます。
型と型を組み合わせられるようになったり、あるいは自分に合うようにアレンジしてみたり、と、「型」を自由自在に扱うことができるようになって初めて、それが得点力に結び付くのです。
この段階では、様々な問題に当たって、どの切り口で考えていくのか、どの型が使えるのか、あるいは使えないのか、問題の中に隠された型に気づくことができるのか、こういったところまで推し進めて考えられるようになっていかないといけません。
当然、型の習得は不可欠ですから、そのための勉強は怠れません。
ですが、単元ごとの型がある程度習得できたと感じたら、それを自由に使うための「応用練習」に積極的に取り組んでいきましょう。
こういったことができるようになれば、志望校である最難関の中学合格へ向けて大きく動いていけます。
「離」~型から「離れ」て自在となる
教わった型と自分で見出した型の両方に精通していけば、そのうち既存の型に囚われることなく、型から「離れ」て自在となることができます。これが「離」です。
これは中学受験の最難関校の算数の問題に接するとよくわかります。
教えられた通り解ける問題は、多くありません。
大部分の問題は、入試本番で初めて目にするもので、どこにとっかかりを求めていいかわかりにくい。
このとき、既存の型にこだわってしまえば、問題を解く手がかりが決して得られないということも多いのです。
そこで、「いったん『型』のことは忘れて」問題に書かれている一字一句、丁寧に紐解いていきましょう。
条件を書き出したり、問題を整理しなおしたりする中で、「型」が見えてくることもあるし、さらにその先にあるものに気づくこともある。
ここまで来て初めて「問われているもの」が見えてきて、「型」が姿を現し、確実に正答を導き出せるようになるのです。
これが「離」の段階です。
受験生の皆さんには、ぜひこの段階まで進んでほしいし、これができるようになれば最難関中学の算数入試問題など恐れるに足りません。
受験生一人一人の算数の「守・破・離」、達成時期は
最終的に6年の秋に「離」の段階に達している、これが理想です。
ですが、当然個人差はありますから、6年の10月になっても志望校の入試問題でもたついている、と嘆く必要はありません。
一応目安になることを書いておけば
・「守」は6年の夏前に完成させていてほしい
・「破」は単元ごとに「守」をしっかり身につけながら徐々に進められればいいのですが、できれば6年の9月段階で、ある程度の感触はつかんでいてほしい
・「離」については、最難関の学校を目指しているのであれば、先に書いた「6年の秋」にこの段階にいてほしい。ですが、極論を言えば、入試を控えた直前の12月とかでも問題ありません。
それぞれのテーマ、単元で達成時期が異なってもいいのです。
注意してほしいのは、「型」にこだわりすぎる解き方に陥っていないかということ。
「型」にこだわりすぎる、つまりいつまでも「守」の段階にとどまれば、そこから先の発展はありません。
親の目で子供の算数への取り組みを見て、「型」にこだわりすぎるようであれば、もっと自由に考えてみる、もっと書き出して調べてみる、そこから分かることを探らせてみる、という作業中心の解き方をさせてみるのもいいかもしれません。
いかがでしたか。算数が伸び悩んでいる子どもはここに書いた「守破離」のどの段階にいるのかしっかり観察し、その段階に応じたアドバイスをしてあげてください。