「不正解から学ぶ」
全国一の最難関中学校、灘中学校。
合格する子らももちろん優秀で素晴らしいのですが、そういう子供に育てた保護者から学ぶことは本当にたくさんありそうです。
卒業生220名に対して、東大の現役合格者数は73名。現浪合わせると104名。(2014年度の結果。ですが、他の年度でもそう大きく変わらないようです。)
何と、半数近くが東大合格という実績。
これに、京大や、国公立医学部医学科の人数63名を加えると、何と167名となり、7割以上が難関国公立に合格するという計算になります。
東京の麻布や開成の実績を凌駕するこの優秀な子供たちの育った環境はどんななのか?気になります。
その保護者のスタンス。
- テストを受けたとき、不正解から学ぶことはたくさんありますが、保護者が不正解であることを受け入れること。テストでもなんでも、子どもが失敗したときに、その失敗を親が受け入れてあげることが大切なようです。
- 「我慢強さ」と「人の話を聞く力」を、ふだんの家庭学習の中で身に着けられるようにすること。
- 読書や音楽鑑賞などの「身体化された文化力」の大切さを知り、実践していること。
1の失敗から学ぶ、というのは、できそうでなかなかできない親御さんが多いのではないかと思います。
つい、きつく叱ってしまい、子供を追い込む、そういう経験は多いと思うのですが、失敗することは「いけないこと」ではありません。
むしろ、その失敗を次に生かすためにどうするか、子供自身に考えさせるように持っていくことが保護者の務めでしょう。
2の「我慢強さ」と「人の話を聞く力」は、塾で子供たちを教えていると、よく見えます。
こういう力が備わっている子は間違いなく伸びていきます。
しかし、この力はなかなか塾で身につけられるものではありません。
幼いころからの親のしつけによる、間違いなくそういえると思います。
3は分かりづらいかもしれませんが、子供の育つ環境にかかわる事柄です。
たとえば、親が家でテレビばかり見ていて、子供に勉強しろと言っても効き目がない気がします。
ですが、親がテレビを消し、新聞をしっかり読む様子を子供に普段から見せていると、子供もそれを自然と見習い、新聞をよく見るようになります。
読書についても同様。親が子供の国語の出来を嘆き、少しは本を読んだら?という言葉をかける保護者は多いのですが、それでは親が自分自身よく読書をしているのかというと、疑問ですよね。
やはり、普段からの親の様子を、その背中を子供に見せていってやることが大切でしょう。
これらの環境、スタンスで子育てをする、何も小さいうちから塾通いさせることはありません。普段の生活、育った環境の重要性を理解していただけたらと思います。
知的好奇心を育てる
また、子供に知的好奇心を育てる工夫を、これも普段から行っていくことも非常に大切だと考えます。
「好奇心こそ学びの源泉」と言えます。知ることによって世界が広がるのですから、何とも貴重な経験です。
邪魔をせず、しかり見守ってやるという姿勢、もっと知りたいという欲求に、図書館に付き合ってあげるなどして、応えてやる姿勢、これが子供の能力を育てていきます。
こんな例があります。
おばあちゃん子でした。
両親は共働きでなかなか普段から子供に接する時間が取れません。
そこで、近所に住む、母方のおばあちゃんに預ける時間が多くなります。
おばあちゃんは、孫に自分の知っていることを、ポツリポツリと語って聞かせます。
色々な話をするうち、孫が興味を持って聞き入るところがあることに気づきました。
そこで、おばあちゃんは、孫を近所の図書館に連れて行き、孫のすきそうな本を一緒に見て回りました。
孫は、本を借りて、おばあちゃんちで、おばあちゃんに読んでもらったりしながら、だんだんと興味の幅を広げていきました。
塾に通いだす小学校4年まで、そういう生活が続きましたが、その子は、それまで学校の宿題以外はやったことがありませんでした。
暇さえあれば図書館で借りた本を熱心に見ていたのです。
4年で塾の勉強を始めた時は、まわりがみんなとてもよくできて、焦ったそうですが、徐々にその差は埋まり、最後には、学年の中でもトップクラス、無事灘中学校に合格しました。
合格後、本人や両親と話をしたとき、受験に役立ったことを尋ねたら、彼はこういいました。
「おばあちゃんと、いろんな本を読んで、世界が広がって、国語や理科で困ることは全くなかった。」
本当の英才教育とはこういうことでしょうか。
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